過去の記事一覧
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05「アル昏」狂騒曲 前奏アルコール出血性胃炎最初の吐血
五十二年六月、起き抜けに胸もとヘグッと込み上げるものがあった。診察室の流しにぺッと吐いた。あか黝い凝固しかかった血であった。続けざまに盃二杯分の量…
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02「アル昏」潜伏期学校保健は酒とともに叔父推賞の店 むさしや
「あんた、四郎さんの甥っ子だろう。」酒屋の印の入った小意気な半天を羽織って、白前掛けの紐を前でキリッと結んだ老爺が、飯台の前に腰を下ろした私…
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01「アル昏」こと始め貧乏学生時代 衛研カクテル
「おい、西郊、いいものを飲ませるから来いよ。」級友の吉田が私を誘った。連れて行かれた所は、学校の裏を流れる中村川の対岸にある神奈川県立衛生研究所の、古びた建物の三階の検…
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01「アル昏」こと始め酒の修行は野毛の街 Y校理容美容科の講師
医師としての私の目標は、臨床医家ではなく生理学研究にあった。医学生時代を通じて、公私に渡ってお世話になった生理学教室の小川義雄先生の強い影響によるもので…
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04「アル昏」街道まっしぐら医師会理事失格酒場巡りひたすら
五十年四月、私は地元金沢区から推されて横浜市医師会の理事に就任した。一期二年の任期である。社団法人横浜市医師会として、理事の職は重責である。不幸なことに私は…
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03「アル昏」熟成期町医者への転進三度目の辞表提出
「起きろよッ、西ッさん。もう誰もいないよ。」揺り起こされて、ハッと目が覚めた。黒檀の座卓に突っ伏して、いつか眠っていたらしい。せっかく良い気持ちで寝ているわ…
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