非上場会社の株式は市場での取引が行われていないため、換
金性が低い財産です。しかし、発行会社への譲渡や物納を行
うことにより、相続税の納税資金対策になります。

(1) 金庫株の活用
平成13 年の商法改正により、会社は自己株式を自由に取得・保有す
ることができるようになりました。
<相続した自社株の発行会社への譲渡>
・換金が困難な自社株をお金に換え、相続税の納税に充てることがで
きます。
◎みなし配当の不適用
通常、株式をその発行会社に譲渡した場合には、資本金等の額を超
える部分については、「みなし配当」と呼ばれ、配当金としての課税(総
合課税・最高税率50%(平成25 年1 月以降は復興財源税制として2.1%
加算))が行われ、税負担が重くなります。しかし、下記の要件を満た
す者が、相続により取得した自社株を発行会社へ譲渡した場合には、
みなし配当にはならず、全額が譲渡所得として課税(分離課税・税率
20%(平成25 年1 月以降は復興財源税制として2.1%加算))されます。
①相続又は遺贈により財産を取得し、納付する相続税があること
②相続税の申告期限後3年以内に譲渡すること
◎相続税の取得費加算の特例
相続財産について相続税の申告期限後3 年以内に譲渡した場合に
は、譲渡所得の計算上控除する取得費に、譲渡した資産に対応する
相続税額が加算され、譲渡所得税の負担を軽減することができます。
(2) 物納の活用
平成18 年の税制改正により、物納財産が明確化され、非上場株式
の物納が容易になりました。
◎物納の要件(金銭納付困難事由)
相続税は、原則として金銭で一括して納めなくてはなりません。一括
納付できない部分については、最大20 年の分割払いによる延納を検討
し、延納によっても金銭で納税できない部分の税額に限り、物納が認め
られます。
◎物納財産の順位
物納に充てることができる財産には、順位があります。
第1順位:国債・地方債・不動産・船舶
第2順位:社債・株式・証券投資信託又は貸付信託の受益証券
第3順位:動産
自社株は第2順位に該当することから、物納に充てることができる国債
や不動産などがない場合に限り、物納に充てることができます。
(注)譲渡制限株式は物納することができません。物納するためには定
款の変更などが必要となります。
◎物納後の処分
物納された自社株は、原則として一般競争入札により処分されます。
好ましくない者に株式が渡らないようにするためには、「随意契約適格
者」(物納申請者、その発行会社、主要株主、役員など)が一定の書
類を提出し、原則として収納日から1年以内に買い戻す必要があります。

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