当社は、土木工事業を営む法人です。前期は目標売上高に到達しないこと等から、A工事(工事期間3年の請負契約)につき、工事進行基準を採用していました。今期のA工事は順調に推移していましたが、期中に材料費・諸経費の高騰のあおりで工事原価が予想より高くなっていました。今期決算で、A工事の収益の算定に当たって、前期と同様に当初見積額を予想工事総原価額として算定を行いました。その後の税務調査で「工事進行基準を適用するに当たり、適正な工事進行割合にて算定が行われていない」と指摘されてしまいましたが、どうすればいいでしょうか?

Q.
当社は、土木工事業を営む法人です。前期は目標売上高に到達しないこと等から、A工事(工事期間3年の請負契約)につき、工事進行基準を採用していました。今期のA工事は順調に推移していましたが、期中に材料費・諸経費の高騰のあおりで工事原価が予想より高くなっていました。
今期決算で、A工事の収益の算定に当たって、前期と同様に当初見積額を予想工事総原価額として算定を行いました。その後の税務調査で「工事進行基準を適用するに当たり、適正な工事進行割合にて算定が行われていない」と指摘されてしまいましたが、どうすればいいでしょうか?

A.
 工事進行基準を採用するに当たり、年度末に適正な工事進行割合を把握し、合理的な収益を算定しなければなりません。適正な工事進行割合を把握するためには、工事原価の負担度や工事の進行度等の現状を確認し、決算時点における予想工事総原価額を見積もっておく必要があります。A工事については、その予想工事総原価額を当初見積額のままにしてしまっていたことに問題があり、適正な工事進捗度による工事収益・工事費用の見直し後、修正申告を求められると思われます。

A工事の予想工事総原価額については工期1年度目の当初見積額は差し支えないものでしたが、工期2年度目については、材料費・諸経費の高騰のあおりを受けました。A工事の予想工事総原価額が、工期1年度目と2年度目で異なってきますので、見直さなければなりません。見直し後の予想工事総原価額により、適正な工事進行割合が把握され、A工事の工事収益が算出されます。
短期間で完了する工事であれば、一般的に工事開始に伴って材料等の発注がある程度行われますので、負担度合いの大幅な変化はないといえます。一方、A工事のように長期間を要する工事の場合は、現実の経済状況の変化等複数の要因により、工事材料費・諸経費の負担度合いが年によって変化することが予想されます。
また、工事進行基準を採用した工事については、予想工事総原価額の変動以外にも、当初の請負契約金額に変更があれば、年度ごとに見直しを検討しなければなりませんので、留意が必要です。
 
 税務において、工事進行基準を採用するに当たり、工事進捗度の算定を行い、それを基に当期に係る工事収入及び工事原価を算出します。
a.工事進捗度=発生工事原価額÷予想工事総原価額
b.その事業年度の収益の額=工事の請負契約金額×a-その事業年度よりも前の各事業年度に収益の額とされた金額
c.その事業年度終了時の現況によって予想されるその工事の見積工事原価の額×a-その事業年度より前の各事業年度に費用の額とされた金額
 予想工事総原価額につき、2年度目以後に見直したのであれば、a.工事進捗度も再度算定しなければなりません。
d.見直し後の工事進捗度=その事業年度までの発生工事原価の累計額÷見直した予想工事総原価額

 建設業会計では、一般に公正妥当と認められる合理的な算定基準を継続して用い、原価算定をする必要があります。日常的に起こる共通原価についても、同じく各工事への按分計算をしなければなりません。決算期に、一度完成工事高とした工事の原価につき再び見直しを行い、適正な按分となっているかを確認することが重要です。

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