新築住宅をA氏に引き渡した後50万円の売掛金が残り、毎月少額ずつ入金がありましたが、前期決算月から入金が全くなくなりました

Q.
 当社は建築業を営む法人ですが、住宅建築の受注により業績は好調です。今回、2年前に建築したA氏に対する売掛金30万円につき、回収できる可能性が低いと考え、決算書において貸倒損失としての処理を行いました。
 新築住宅をA氏に引き渡した後50万円の売掛金が残り、毎月少額ずつ入金がありましたが、前期決算月から入金が全くなくなりました。連絡をした際にも値引きを要請されましたので入金する意思がないものと考え、備忘価格1円を残して貸倒れとして処理したのですが、何か問題はありますか?

A.
 法人税法における一定の条件に該当すれば、貸倒損失として認められます。
 売掛金を最後に返済して以降1年以上が経っているものの、継続的な取引か否かを検討することなく貸倒損失を計上したことに問題があります。
 ご質問のケースにおいては、継続取引における貸倒損失に当たりませんので、法人税法における条件に該当せず、貸倒損失としての処理は認められないと思われます。

 ご質問のケースでは、法律上の貸倒れや形式上の貸倒れの条件に該当しませんので、事実上の貸倒れに当たるか否かを検討しなければなりません。その債務者の支払能力や資産状況等よりその全額が回収不可能であることが明白になれば、事実上の貸倒れは計上することができます。個人の資産状況を把握するのは、容易ではない可能性が高いでしょう。内容証明郵便等で支払いを請求すること、債権放棄も選択肢の一つとして、貸倒れ処理を検討することが重要になると思われます。

 貸倒損失の計上に関しては、法人税法上、法律上の貸倒れ、形式上の貸倒れ、事実上の貸倒れについての定めが存在します。

1.法律上の貸倒れ
 次のような事実を基に切り捨てられる金額は、その事実が発生した事業年度の損失の額に算入されます。
○相当期間にわたって債務者の債務超過状態が継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合において、その債務者に対して書面で明らかにした債務免除額
○会社法、会社更生法、民事再生法、金融機関等の更正手続きの特例等に関する法律の規定によって切り捨てられる金額
○法令の規定により整理手続きによらない債権者集会の協議決定及び行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で合理的な基準によって切り捨てられる金額

2.事実上の貸倒れ
 債務者の支払能力や資産状況等よりその全額が回収不可能であることが明白になれば、その明白になった事業年度において貸倒れとして損失処理が可能です。ただし、担保物が存在するならば、損金経理ができるのは、その担保物を処分した後となります。
 なお、保証債務を貸倒れの対象とすることができるのは、実際に履行した後です。

3.形式上の貸倒れ
 次の事実が発生したら、その債務者に対する売掛債権につき、その売掛債権の額より備忘価額を差し引いた残額を貸倒れとして損金処理できます。
○同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用に比べて少額であり、支払いを督促しても弁済がない。
○継続的な取引をしておた債務者の支払能力や資産状況等の悪化により、その債務者との取引を停止し、その取引停止時と最後の返済時などのうちで最も遅い時点より1年以上が経った(ただし、その売掛債権につき担保物が存在する場合は除外される)。

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