当社は、設立後数年の総合工事業を営む法人です。事務員を雇用する余裕のない状況が続いたため、A課長が事務部門と現場監督を兼務し、ほとんどの現場を担当していました。そして、A課長の給与は、一般管理費(事務員給与)として経費処理を行っていましたが、その後の税務調査で「期末の未成工事支出金に、未完成工事の現場に関わった現場監督の給与が含まれていない」という指摘がありました。事務部門も兼務していることから単純に一般管理費として経費処理をしていたことに問題があったでしょうか?

Q.
 当社は、設立後数年の総合工事業を営む法人です。事務員を雇用する余裕のない状況が続いたため、A課長が事務部門と現場監督を兼務し、ほとんどの現場を担当していました。そして、A課長の給与は、一般管理費(事務員給与)として経費処理を行っていましたが、その後の税務調査で「期末の未成工事支出金に、未完成工事の現場に関わった現場監督の給与が含まれていない」という指摘がありました。事務部門も兼務していることから単純に一般管理費として経費処理をしていたことに問題があったでしょうか?

A.
 現場監督の給与は工事原価の一つの要素である労務費に該当します。したがって、現場における作業員のみならず、現場監督の給与についても、期末の未成工事支出金に計上する必要があります。
 ご質問のケースにおいては、工事原価とすべき現場監督の給与が一般管理費の給与として処理されましたので、未成工事支出金に配賦すべき労務費の分まで損金算入されています。今後は、期末の未成工事支出金の見直し後に、修正申告を求められるものと思われます。

 ご質問のケースでは、現場監督の給与も工事原価の一つの要素である労務費に該当しますので、期末の未完成工事に配賦する労務費は未成工事支出金として計上しなければなりません。そして、2カ所以上の工事現場に関わりがあるのであれば、未完成工事に対応した労務費を正しく算出して配賦できるか否かを検討しなければなりません。
 したがって、各現場に現場監督の給与総額や法定福利費の器楽を配賦すべく、普段から作業日報等によって各現場に対する労務割合が分かるように管理する必要があります。
 期末の未成工事支出金を適正に計算するためだけでなく、労働保険料の申告・納付においても、工事に係る労務費と一般管理費となる給与等に区分して従業員の給与を管理することが重要です。

 「建設業法施行規則別記様式第15号及び第16号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類を定める件」においては、労務費は次のとおり規定されています。
労務費:工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金、給料及び手当等。工種・工程別等の工事の完成を約する契約でその大部分が労務費であるものは、労務費に含めて記載することができる。

 それ故、「労務費」として計上するものとして、現場で直接仕事をする作業員の賃金だけでなく、工事現場に関わる従業員の給料等も挙げられます。そして、期末の未完成工事に関しては、その工事の原価となる労務費を未成工事支出金として計上する必要があります。現場監督者や現場作業員等の労務費が分かるよう、作業工程表や作業日報を備えることが重要です。

 なお、「建設業法施行規則別記様式第15号及び第16号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類を定める件」においては、販売費及び一般管理費のうちの従業員給料手当は次のとおり規定されています。
従業員給料手当:本店及び支店の従業員等に対する給料、諸手当及び賞与(賞与引当金繰入額を含む。)

 設立後あまり時間が経過していない建設業者等の比較的小規模の建設会社においては、事務と現場を兼務している従業員が少なくないものと思われます。従業員については上記のとおりですが、使用人兼務役員が存在するのであれば、使用人部分は一般の従業員と同様の給与の性質を有していますので、工事原価となるかどうかの確認をあらかじめ行うことが大切です。

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