当社は、建設業を営む法人(3月決算)です。今期(第5期)の業績が良かったこともあり、決算期末後の4月下旬に法人税を試算しました。すると、納税額が高額になると判明しましたので、従業員に対して決算賞与という形で賞与を支給し、従業員に会社の利益を還元することにしました。3月末日付でその決算賞与の額面金額を未払金として会計処理し、5月31日に従業員に対して支給をしましたが、何か問題があるでしょうか?

Q.
 当社は、建設業を営む法人(3月決算)です。今期(第5期)の業績が良かったこともあり、決算期末後の4月下旬に法人税を試算しました。すると、納税額が高額になると判明しましたので、従業員に対して決算賞与という形で賞与を支給し、従業員に会社の利益を還元することにしました。3月末日付でその決算賞与の額面金額を未払金として会計処理し、5月31日に従業員に対して支給をしましたが、何か問題があるでしょうか?

A.
 業績が良かった場合、節税対策の一つとして、決算賞与がしばしば支払われるようです。ただし、一定の条件に該当する場合のみ、未払いの決算賞与を損金とすることが認められていますので、留意しなければなりません。
 ご質問のケースにおいては、決算賞与の支給を事業年度末日より後で決めている点と、賞与の支給日に問題があります。

 ご質問のケースでは、今期(第5期)に未払いの決算賞与を損金算入するためには、第一に、決算賞与を支給する旨を、その事業年度末である第5期の3月末日までに、全従業員に対して通知します。
第二に、第5期の決算において決算賞与を未払金として会計処理し、その通知した額を翌事業年度(第6期)の4月30日までに全従業員に対して支給します。事業年度末日までに通知を行わなければならないことに、留意が必要です。ご質問のケースの法人については、事業年度の見直しや試算時期を早めにするといった対応をすべきでした。
 なお、ご質問のケースのように、期末までに通知を行わずに、事業年度末より1カ月以上経過してから決算賞与の支払いをした場合、支給した5月31日を含む事業年度(第6期)の損金として処理する必要があります。

 三つの条件に該当する場合のみ、未払いの決算賞与をその期の損金に算入することが認められ、税法においては次のように定められています。
 次の全ての条件に該当する賞与については、「使用人にその支給額を通知した日の属する事業年度」の損金の額に算入します。
1.その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全使用人に通知をおこなっていること
  ※法人が支給日に在職する使用人だけに賞与を支給することにしているのであれば、その支給額の通知は、上記の「通知」には当たりません。
  ※法人が、その使用人に対する賞与の支給につき、いわゆるパートタイマー又は臨時雇いといった身分で雇用している者(雇用関係が継続的なもので、他の使用人と同じく賞与の支給対象としている者を除く)とその他の使用人を分けているのであれば、その区分ごとに支給額を通知するか否かの判定を行うことが可能です。
2.上記1の通知を行った全使用人に、その通知を行った日の属する事業年度終了日の翌日より1カ月以内に支払っていること
3.その支給額について、上記1の通知を行った日の属する事業年度に損金経理を行っていること
 すなわち、期末までに従業員ごとの支給額を明示して通知し、通知した金額を期末より1カ月以内に支払い、決算書利で決算賞与の金額を損金経理している場合にのみ、未払いの決算賞与をその期の損金とすることが認められています。

 決算賞与については、決算における未払計上により利益圧縮につながり、また、従業員の士気向上にもつながりますので、業績の良い会社の場合は、メリットばかりのように思えます。しかし、法人税法においては、複数の条件が定められていますので、それらの全てをクリアしなければなりません。実務においては、決算日までに従業員に対して通知を行ったときに確認印をもらうこと等により、調査時に提示できる資料を作成しておくことが重要です。

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