当社は建築業を営む法人ですが、ほとんどの資材をA社より仕入れています。A社は資材以外にも商品を幅広く扱い、事務用品や機械・作業用品の修理もしています。このたび、A社より現場事務所で用いる12万円のパソコンと11万円のプリンターを購入しました。パソコン等は資材と同時に発注したこと等から、A社より発行された請求書の分全てを未成材料費として処理していました。そして、工事も完成しましたので工事原価として計上していました。後の税務調査で「取得価額が10万円以上の事務用消耗品が工事原価に算入されています。減価償却資産に当たることから、全額工事原価に算入することは不可能です」と指摘されました。パソコンとプリンターにつき、未成材料費として処理したことに問題があったのでしょうか?

Q.
 当社は建築業を営む法人ですが、ほとんどの資材をA社より仕入れています。A社は資材以外にも商品を幅広く扱い、事務用品や機械・作業用品の修理もしています。このたび、A社より現場事務所で用いる12万円のパソコンと11万円のプリンターを購入しました。パソコン等は資材と同時に発注したこと等から、A社より発行された請求書の分全てを未成材料費として処理していました。そして、工事も完成しましたので工事原価として計上していました。
 後の税務調査で「取得価額が10万円以上の事務用消耗品が工事原価に算入されています。減価償却資産に当たることから、全額工事原価に算入することは不可能です」と指摘されました。パソコンとプリンターにつき、未成材料費として処理したことに問題があったのでしょうか?

A.
 資材と同時に購入した消耗品であっても、取得価額が10万円以上である消耗品は、減価償却資産に当たります。ご質問のケースでは、いろいろな現場において使えるパソコンとプリンターにつき、資産計上を検討しないまま未成材料費として処理したことに問題があります。
 パソコンとプリンターは減価償却資産と見なされますので、修正申告を求められ、工事原価に計上した金額は否認され、その減価償却資産の当期に対応する減価償却額を算定することになると思われます。
 なお、減価償却資産は市町村に対する「償却資産の申告」にも影響を及ぼし、修正申告をしなければならなくなると考えられます。

 ご質問のケースでは、10万円以上の資産を購入していますので、減価償却資産に該当するか否かを検討しなければならないといえます。
 中小企業等が減価償却資産を購入し、その資産が「中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例」に当たるならば、その特例を選択することで取得価額の全額を損金の額に算入することができます。ただし、購入済みの資産が少額減価償却資産として認められるには、少額減価償却資産の取得価額についての明細書を添付しなければなりません。
 なお、上記特例以外にも、原則10万円以上20万円未満の減価償却資産については、3年間で均等償却することもできます。

 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度については、次のとおりです。
 法人が下記の減価償却資産の取得等を行って事業の用に供したら、通常の減価償却の代わりに取得価額に相当する金額等を経費として計上することが可能です。
1.取得価額が10万円未満のものや使用可能期間が1年未満のものについては、それを取得するのにかかった金額の全てを業務の用に供した年分の必要経費とします。
2.取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一定の条件下でその減価償却資産の全部か特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1に当たる金額をその業務の用に供した年以降3年間の各年分において必要経費に算入することが可能です。
3.一定の条件に該当する青色申告者が、平成18年4月1日~平成28年3月31日に取得した10万円以上30万円未満の減価償却資産(上記1・2の適用を受けるものを除く)については、一定の条件下でその取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの額をその業務の用に供した年分の必要経費に算入することが可能です。

 中小企業者等の場合、取得価額30万円未満の少額の設備については、取得価額20万円未満のものでも「少額減価償却資産」として一括損金算入することを選択されることも多いでしょう。取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産について3年間で均等償却できる「一括償却資産」として処理すれば、償却資産税が課されないことにも注目すべきです。少額資産に関しては、社内において慎重に検討を行った上で計上方法を決めることが重要です。

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