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- 第2章 事務・経理一般編
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事例25メーカーから広告宣伝用資産をもらった場合の取得価額
事例25
メーカーから広告宣伝用資産をもらった場合の取得価額
私は会社を設立し、居酒屋を経営しているAと申します。店をオープンしてから4年程が経過し、オープン時に中古で購入した冷蔵庫がかなり古くなってきたので買い換えを考えておりました。ちょうどその頃、搬入に来ていたビール会社の方に冷蔵庫の話をしたところ、「我が社の社名が入った冷蔵庫を店内に設置してくれるのであれば、うちの宣伝にもなるので無償で提供しますよ」と言われ、そのビール会社の社名の入った冷蔵庫を無償でもらうことにしました。
この冷蔵庫は無償でもらったものなので弊社では特に経理処理はしておりませんでした。(後でその冷蔵庫はビール会社が120万円で購入したものだ、と担当者から聞かされ、このときは「かなり得をしたな」と思っていました)
決算が近づき、例年通り顧問税理士と打ち合わせをすることになりました。その時に顧問税理士に「あの冷蔵庫は以前にありませんでしたが、どうしたのですか?帳簿にも載っておりませんが?」と聞かれたので、ビール会社から無償でもらったことを話したところ、「このような場合にはもらった冷蔵庫の時価の一部を受贈益として収益に計上しなくてはいけません。さらに、受贈益の金額を冷蔵庫の取得価額として資産に計上し、減価償却も必要になりますよ」と指摘を受けました。
失敗のポイント
モノを無償でもらった場合には収益 (受贈益)という経済的利益が発生し、贈 与を受けた固定資産については資産とし て計上する必要が生じます。(広告宣伝 用資産の贈与を受けた場合には、それ以 外の資産の贈与を受けた場合と受贈益 (経済的利益)の考え方が少し違います が、資産計上するという基本的な処理方 法は同じです) 一般に固定資産などの「モノ」をもらっ た場合には、現金をもらった時のように 「入金」という処理がないので「収益」と いう認識が薄く、何の処理もしなかった ことが今回の失敗のポイントです。
正しい対応
飲食店がビール会社などの製造業者から固定資産の贈与を受けた場合には、まずそれが広告宣伝用資産であるのかを判定します。
判定の結果、その固定資産が広告宣伝用資産に該当しない場合にはその資産のその贈与を受けた時の時価で受贈益を計上し、同額をその固定資産の取得価額とします。
判定の結果が広告宣伝用資産に該当する場合には、製造業者等のその資産の取得価額の3分の2に相当する金額を受贈益として計上し、同額をその固定資産の取得価額とします。
本事例では製造業者等から贈与を受けた資産が広告宣伝用資産に該当しますので、製造業者等のその資産の取得価額の3分の2に相当する金額を受贈益として計上し、同額をその冷蔵庫の取得価額としますので、120万円の3分の2の金額である80万円を受贈益として計上し、冷蔵庫の取得価額80万円を計上します。
ポイント解説
1 .固定資産を贈与された場合の処理
法人が固定資産を贈与によって取得した場合には、贈与を受けた資産の贈与時の時価を受贈益として益金の額に算入されます。同時に、その資産の時価にその資産を事業の用に供するために直接要した費用の額を加算した額をその固定資産の取得価額として処理します。
(例)贈与された120万円の冷蔵庫を設置するため、取付費10万円を現金で支払い、事業の用に供した場合の仕訳
設備備品 130万円/受贈益 120万円
現金 10万円
2 .店がメーカー等から資産(広告用宣伝用資産)を贈与された場合
この事例のように、店が仕入れ先メーカー等から資産を無償で取得した(=贈与された)場合には、その資産を仕入れ先メーカー等が取得したときの「取得価額」(事例のAさんの場合、ビール会社が冷蔵庫取得のために支払った120万円)を経済的利益の額(受贈益)を益金の額に算入します。
ただし、その取得した資産が以下に掲げるような広告宣伝用のものである場合には、その経済的利益の額(受贈益)は、製造業者等のその資産の取得価額の3分の2に相当する金額とし、当該金額(同一の製造業者等から2以上の資産を取得したときは当該金額の合計額)が30万円以下であるときは、経済的利益の額はないものとします。
(1) 自動車(自動三輪車及び自動二輪車を含む)で車体の大部分に一定の
色彩を塗装して製造業者等の製品名又は社名を表示し、その広告宣伝を目的としていることが明らかなもの
(2) 陳列棚、陳列ケース、冷蔵庫又は容器で製造業者等の製品名又は社名の広告宣伝を目的としていることが明らかなもの
(3) 展示用モデルハウスのように製造業者等の製品の見本であることが明らかなもの
Aさんの事例のように広告宣伝用資産を直接贈与された場合だけでなく、販売業者等が製造業者等から広告宣伝用資産を取得するためにお金をもらった場合についても同様の処理をしなければなりません。
また、仕入れ先メーカー等の広告宣伝用の看板、ネオンサイン、どん帳のように、明らかに広告宣伝のための資産を受けた場合は、受贈益を計上する必要はありません。