事例20賃借物件に造作を行った場合の取扱い

事例20
賃借物件に造作を行った場合の取扱い

私は居酒屋を営む法人の代表取締役Aという者です。近頃は不景気の影響か弊法人の周辺でも空きテナントが増え、賃借料も下がってきていました。弊法人では、これを機運が熟したと見て、前々より出店計画のあった中華料理店(第2号店)を、今期の頭にオープンしました。第2号店は本店の近くにある雑居ビルの2階の賃借物件となっており、賃借契約の基本的な内容は以下の通りです。
(1) 賃借期間…6年間
(2) 賃借期間満了の場合には賃借期間の更新が可能である。
(3) 退去時には賃借物件は原状に復した状態で退去するものとする(当該条件を満たせば賃借物件に造作を行ってもよい)。 弊法人では上記賃借物件の入居に当たり、内装を中華風にするため、壁や床の張替え等の大掛かりな造作を行いました。そして造作に要した費用300万円のうち、資産として計上した230万円を賃借期間である6年で償却を行う、という経理処理を行っていました。
しかし、こちらの経理処理について決算期に担当の税理士から、「今回の契約内容では賃借期間が6年間となっていますが、賃借期間の更新が可能であるため、6年間で償却を行うことはできません」との指摘を受けました。

失敗のポイント

「賃借期間が6年間なので償却期間も6年」としたことが失敗のポイントです。他人の建物に内部造作を行った場合に、その内部造作の減価償却に関して賃借期間を利用できるのは「その建物について賃借期間の定めがあり、その賃借期間の更新ができないもので、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないもの」に限られます。今回のケースでは、賃借期間の更新が可能であったため賃借期間は利用できません。

正しい対応

今回のケースでは賃借期間の更新が可能であったため、賃借期間で償却を行わずに、造作の内容の検討を行い、造作が建物についてされたものである場合には、賃借物件の建物の耐用年数より合理的に算出した耐用年数により償却を行い、建物附属設備についてされたものである場合には、建物附属設備の耐用年数にて償却を行う必要がありました。

ポイント解説

「耐用年数の適用等に関する取扱通達」には他人の建物に対する造作の耐用年数について下記のように記載されています。「法人が建物を貸借し自己の用に供するため造作した場合(現に使用している用途を他の用途に変えるために造作した場合を含む。)の造作に要した金額は、当該造作が、建物についてされたときは、当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数により償却する。ただし、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができる。
(注) 同一の建物(一の区画ごとに用途を異にしている場合には、同一の用途に属する部分)についてした造作は、そのすべてを一の資産として償却をするのであるから、その耐用年数は、その造作全部を総合して見積ることに留意する。
したがって、他人の建物に対して造作を行った場合には「造作の内容」の確認を行い、造作の内容が建物に対するものであるのか、建物附属設備に対するものであるのかを判断します。その判断が終了した後、「賃借契約の内容」の確認を行い、賃借期間での償却が可能であるのかどうか等を検討しながら耐用年数を定めることとなります。

もうワンポイント

店舗用簡易装備
飲食店業が行う造作には、「店舗用簡易装備」に該当するものが頻繁に見受けられます。店舗用簡易装備とは、主として小売店舗等に取り付けられる次のようなもので短期間内(おおむね3年以内)に取替えが見込まれるものをいいます。
(1)ルーバー、壁板等の装飾を兼ねた造作
(2)陳列棚(器具及び備品に該当するものを除く)
(3) カウンター(比較的容易に取替えのできるものに限り、単に床の上
に置いたものを除く)なお、造作の内容が店舗用簡易装備に該当した場合には建物附属設備の耐用年数にて償却を行うこととなります。

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