現場に到着してからの時間が労働時間であると思っていました

Q.
 私は建設会社を経営していますが、作業員は多くの場合、会社に集合してからマイクロバスで現場に向かいます。往復30分から1時間程度要するケースがありますが、現場に到着してからの時間が労働時間であると思っていました。
 しかし、従業員より、移動中の時間も労働時間に当たるのではないかという意見が出ました。作業員は、朝集合した後に会社にある道具を車に運び入れる作業を行っていました。移動中の時間も労働時間に含めるべきなのでしょうか?

A.
 移動中の時間についても、作業準備や打ち合わせがなされるのであれば、使用者の指揮命令下にあると判断されますので、労働時間に含まれます。

 ご質問のケースにおいて、移動時間を労働時間に該当しないとするには、会社への集合を義務としない必要があります。直接現場に向かっても構わないことにすれば、使用者の指揮命令は存在しなかったと判断される可能性が高くなります。会社に集まって会社の車で移動しても、労働時間に当たらず、通勤の一環であるとすることが可能です。移動中も作業準備や打ち合わせがなされる場合には、使用者の指揮命令下にあると判断され、労働時間に含まれることになることに、留意しなければなりません。

 移動時間に関する考え方は、移動中も事業主の指揮命令下にある拘束時間であって労働時間であるとするものと、移動時間は通勤時間と同一の性質を持っていて労働時間ではないとするものに大別できます。
 通勤の延長としての意味のみを持つ移動時間については、労働基準法上の労働時間には該当しません。現場に向かう際の集合時刻が極めて早くても、その時間については労働基準法上、賃金を支払う義務が生じないこととなります。しかし、就業場所が社会通念上、著しく遠いようであれば、労働者が通常より自由時間を犠牲にせざるを得ません。近場で作業する他の従業員と均衡を保てないことからも、何かの形で公平化を図る必要があると思われます。なお、車両を運転する者は運転自体が業務であり労働時間となることから、当然賃金が発生します。
 出勤から帰社までの時間を通算して賃金を算出することが適当でないならば、手当として処理するという選択肢もあるでしょう。金額は、現場までの距離か時間を合理的基準として算出すればいいと思われます。出張の距離や所要時間などに応じて手当等を支給する企業が多く見受けられます。手当ての性質や支給基準を従業員に明示して、理解を得ることが重要です。

 労働時間に関しては、近年、会社側においても問題となる場合が少なくないと考えられます。そして、しばしば問題となるのが、「2年前までさかのぼられて」、給与の遡及支払いをする必要が生じるケースです。会社の経営が順調ではないときに、2年分の遡及支払いを行わなければならないというのは、会社にとって相当の負担となってしまいます。そのような状況に陥らないためにも、実際の労務実態の把握・管理を日常的に行って、想定されるリスクについては専門家にあらかじめ相談するといいでしょう。

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