法人の場合、必ず加入しなければならず、また、経営事項審査における評価点数が大きく減ってしまいます

Q.
 私は古くからの大工仲間と3年前に法人成りをし、日当工事を受注しています。
これからは公共性を有する大規模工事も受けたいと思っていたところ、今年になって行政書士より建設業許可の話がありました。許可申請をお願いして手続中でしたが、社会保険に加入していないのかという問い合わせを行政書士より受けました。社会保険に加入したら手取り額が少なくなると従業員に言われて、現在まで未加入ですので、そのことを行政書士に伝えると、「法人の場合、必ず加入しなければならず、また、経営事項審査における評価点数が大きく減ってしまいます」と指摘されました。また、社会保険の他に労働保険というのもあるようですが、これについても加入しなければならないのですか?

A.
 会社については、社会保険と労働保険は、強制加入であって任意加入ではありません。
 「厚生年金保険」・「健康保険」・「介護保険(40歳以上65歳未満)」を社会保険と呼びます。会社に1人でも勤務している場合には、社会保険に加入するのが原則です。会社には社長1人しかいなくても、社会保険に加入しなければなりません。
 また、「雇用保険」と「労災保険」のことを労働保険と呼びます。雇用保険については、従業員が失業した場合に失業保険を受けることができ、また条件に該当すれば各種助成金を活用することも可能です。パートやアルバイトを含む労働者を1人でも雇っているのであれば、労働保険に加入しなければなりません。一方、会社に勤めているのが役員(使用人兼務役員を除く)のみである場合には、加入する義務を負いません。加入手続については、まず労災保険の手続が管轄の労動基準監督署で完了してから、雇用保険の手続を管轄の公共職業安定所(ハローワーク)で行うこととなります。
 なお、厚生年金保険、健康保険及び雇用保険に未加入である場合、かつては経営事項審査における減点が各30点でしたが、近年の改正によって減点幅が拡大され、各40点の減点となっています。

1.社会保険加入のためには
 対象者:役員、正社員。パートやアルバイトについては、1日かつ1カ月の所定労働時間が正社員の4分の3以上である者
 保険負担:労使折半
 必要書類:健康保険・厚生年金保険新規適用届、新規適用事業所現況書
      健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
      健康保険被扶養者(異動)届
 提出期限:その事実が発生してから原則として5日以内
 提出先:管轄の年金事務所

2.労働保険加入のためには
 (1)雇用保険
  対象者:1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる労働者
  保険負担:一般の事業は会社負担が1,000分の7で労働者負担が1,000分の4
       建設の事業は会社負担が1,000分の9で労働者負担が1,000分の5
       (平成28年4月1日~平成29年3月31日)
  必要書類:雇用保険適用事業所設置届
       雇用保険被保険者資格取得届
  提出期限:雇用保険適用事業所設置届は設置日の翌日より10日以内
       雇用保険被保険者資格取得届は雇用月の翌月10日まで 
  提出先:管轄の公共職業安定所(ハローワーク)
 (2)労災保険
  対象者:正社員、アルバイトといった形態にかかわらず、労働の対価として賃金を受ける全ての労働者
  保険負担:全額を会社が負担
  必要書類:労働保険保険関係成立届、労働保険概算保険料申告書
  提出期限:労働保険保険関係成立届は保険関係が成立した日より10日以内、       労働保険概算保険料申告書は保険関係が成立した日より50日以内
  提出先:管轄の労働基準監督署

 近年の経済情勢によって建設業の受注量が減っていることから、企業が存続のため従業員をいわゆる一人親方として独立させる場合も少なくありません。企業が存続のために、経費負担を一人親方に寄せたり、経験年数が少ない者を解雇し、非自発的に一人親方となったという事例も存在します。このような場合、社会保険に加入していないという問題があることも多いと思われます。
 建設業の置かれている状況に鑑みて一人親方は貴重な存在ですが、一人親方として業務請負とされずに、労働者とされる場合もあります。一人親方として個人事業を営んでいるのであれば、通常は個人で社会保険に加入する必要があります。前述のとおり、形式上一人親方として業務請負になったという場合も少なくありませんので、現場における指揮監督を受けて仕事をしている労働者と判断されるケースも存在します。その場合、社会保険の被保険者として加入しなければならないことから、留意する必要があります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る