内装塗装会社のB社(私の弟が100%出資)に2,500万円で売却することに決めました

Q.
 私は、建築会社を経営するA社のオーナー(A社には100%出資)を務めています。A社は、業績が好調なため今期はかなりの利益が予想されます。したがって、A社所有の含み損が発生している土地(薄価3,000万円)を、内装塗装会社のB社(私の弟が100%出資)に2,500万円で売却することに決めました。このことにより、A社の利益を500万円減少させ、売却代金2,500万円も入りますので、節税できたと考えてよいでしょうか?

A.
 平成22年の税制改正で、グループ法人税制が新設されましたが、直接資本関係のある法人同士のみならず、判定対象となる個人の親族等に該当する個人が有する法人や同一オーナーが100%出資する二つの法人同士は、「100%グループ法人」とされます。
ご質問のケースにおいては、A社と、A社のオーナーの弟のB社は、いずれも各人が各会社に100%出資しており、この二つの会社間の取引は、100%グループ法人の取引といえます。
 ちなみに、この税制改正前には、グループ内における資産の譲渡については、譲渡損益を計上することとされていました。しかしながら、ご質問のケースにおいて、グループ法人税制で譲渡損が譲渡損益調整資産に当たりますので、会計上は譲渡損益を計上するものの、法人税法上は繰り延べられます。したがって、A社に計上されている固定資産売却損500万円は、損金算入が不可能です。具体的には、法人税の算出に当たり、譲渡損の金額の益金算入によって、譲渡損が繰り延べられます。
 グループ法人税制は、法人の規模とは無関係に適用されますので、中小企業には関係ないということでは決してありません。

 100%グループ法人の間で、建物といった「譲渡損益調整資産」を譲渡した際、譲渡損益は法人税法上繰り延べられます。
繰り延べられた譲渡損益については、グループ外に対する譲渡、償却、評価替え、除却、貸倒れ等により計上されます。

 グループ会社の範囲は、100%株式保有による「完全支配関係」のある法人です。

1.完全支配関係
 「完全支配関係」とは、次の関係のことです。
○一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係
○一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係
 完全支配関係のあるグループ法人の範囲の例を、次に挙げます。
○C社が100%出資してD社を設立し、D社が100%出資してE社を設立すれば、C社、D社、E社は完全支配関係のあるグループ法人となります。
○F社が100%出資してG社及びH社を設立すれば、F社、G社、H社は完全支配関係のあるグループ法人となります。
○I社が100%出資してJ法人を設立し、その後I社とJ社が例えば50%ずつ出資してK社を設立すれば、I社、J社、K社は完全支配関係のあるグループ法人となります。
○個人甲(又は外国法人)がそれぞれ100%出資してL社と<社を設立すれば、L社とM社は完全支配関係のあるグループ法人となります。
○一定の同族関係者である個人甲と個人乙がそれぞれ100%出資してN社、O社を設立すれば、N社とO社は完全支配関係のあるグループ法人となります。

2.一の者が個人である場合
 「一の者」による完全支配関係の場合において一の者が個人のときには、その範囲にはその者及びその者と特殊の関係のある個人が含まれます。「特殊の関係のある個人」とは、具体的には次の者のことです。
 (1)株主の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)
 (2)株主と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
 (3)個人である株主の使用人
 (4)個人株主から受ける金銭等により生計を維持している者
 (5)上記(1)〰(4)の者と生計を一にするこれらの親族

3.譲渡損益調整資産
 「譲渡損益調整資産」とは、その譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額(税法上の帳簿価額)が1,000万円以上となる次の資産のことです。
○固定資産
○棚卸資産に当たる土地(土地の上に存する権利を含む)
○繰延資産
○有価証券(売買目的有価証券を除く)
○金銭債権

 平成22年10月1日より、グループ法人税制の全面適用が始まっています。また、平成23年3月決算法人以降、グループ法人税制の適用のある法人については、グループ内法人を一覧化する出資関税図を申告時に提出することになっています。土地や有価証券の売買等、ご質問のケースのように含み損を実現する場合等には、特段の留意が必要であることから、あらかじめ顧問税理士に相談の上で売買を検討するといいでしょう。

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