断酒新生会-新しく頼もしい仲間たち


08断酒会とともに

断酒新生会-新しく頼もしい仲間たち

永久断酒は一日断酒から
 せりがや病院を退院した私が、地元、横浜市金沢区の断酒新生会支部の例会に出席したのは、十月六日の晩であった。私の入退院の経過については、妻を通じて支部長の中田隆夫さんに逐一報告されていた。会場に入る早々、中田さんは、「やぁ、よく来ましたね。これから仲良くやりましょう。」と握手を求めてきた。私も力強く握りかえした。広間一杯に方形に並べられた机には、すでに十数名の会員がそれぞれ好みの席に座って雑談が弾んでいた。後からも続々と詰めかけて来る。どの人も笑顔で、打ち解けた挨拶を交わしている。私にはすべてが初めて見る顔であったが、不思議に違和を感じさせない雰囲気を銘々が持っていた。この会は横須賀断酒会との合同例会で、やがて定刻にはほぼ席が埋まる。三十名近い出席者のうち地元の会員は十数人で、他は各地区からの随時参加者である。これが断酒会の特徴で、どこの例会へも出席は自由である。断酒会のスローガンの一つに、「足で稼げ」という言葉がある。その日の断酒に自信の持てない
人は、その月の日程表を見て例会場を探し、そこに出席して断酒仲間と語らうことにより、気がほぐれて楽になり一日断酒を守り抜くのである。この例会にも、横浜市内はもとより鎌倉、逗子、遠く小田原あたりからも参加者がある。時には静岡県等の断酒会員や精神病院職員の姿も見えた。
 一日断酒についてはほろ苦い経験がある。初めの頃私は、「生涯断酒」だと力んで、この語句を患者であったさる人に色紙に揮毫してもらい、れいれいしく診察室に貼って得意になっていた。そのことをあるとき、横須賀市断酒新生会の鈴木留雄会長に話したら一笑に付された。「できっこないですよ。飽くまでも、一日断酒です。」事実その通りであった。間もなく私はスリップした。スリップとは文字どおり、断酒の道を踏み外して滑り落ちること、すなわち飲酒に走ることである。なお、一日断酒とは、今日は飲まないぞと自分に誓い実行することで、次の日もまた、今日は飲まないと決心して飲酒したがっている自分の心と戦う。一日を確実に飲まないで過ごすことが一日断酒であり、その繰り返しが永久断酒につながる秘訣なのである。「生涯断酒」ほど空虚な言葉はない。

 断酒会の柱
 例会は、会員がおたがいにその日の感想等を皮切りに、飲酒に苦しんでいた頃の回想、家庭や職場での葛藤、断酒への苦労、現状報告、心境などを忌憚なく語りあい、励ましあって断酒への連帯を強める会で、話の内容は自ずから多岐多彩である。一つ意識に結ばれているだけに赤裸々
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