第1章 グループ法人税制の概要

ポイント
いわゆる「グループ法人税制」は、大きく次のように区分され、広い範
囲にわたって適用される税制です。

1. グループ法人税制
2. 連結納税制度
(1) グループ内の法人間の取引
(2)グループ内法人の位置づけ
《制定の趣旨》
グループ法人税制とは、現行の単体課税の下で、所得通算までは行わない一方、
グループ内取引やグループ法人のステータスについてグループ経営の実態を反映さ
せることを目的として新たに創設された制度です。
(選択制の連結納税制度と区別するために、便宜的に、「グループ法人単体課税
制度」(以下、単に「グループ法人税制」)と呼ばれています)
具体的には、次のような内容が含まれます。
なお、グループの範囲は、原則として100%株式保有による支配関係を対象とし
ており、その対象には個人や外国法人による支配関係も含まれます。


① 100%グループ内の法人間の資産の譲渡等
② 100%グループ内の法人間の寄附
③ 100%グループ内の法人からの受取配当
④ 100%グループ内の法人からの現物配当
⑤ 100%グループ内の法人の株式の発行法人への譲渡等(金庫株)
① 大法人の100%子会社に対する中小企業向け優遇制度の適用

グループ内取引の譲渡損益の繰り延べ
一定の規模の資産の移転を行ったことにより生ずる譲渡損益は、その資産
のそのグループ外などへの移転等の時まで繰り延べられることになります。
資産の移転には、非適格合併による移転も含まれます。

大法人の100%子会社の中小特例の適用見直し
中小企業向け優遇措置の見直しが行われます。資本金の額が5 億円以上の
法人の100%子会社等については、中小企業向けの優遇措置が適用されない
こととなります。

連結納税制度の見直し
連結納税制度の採用をためらわせる税制上の課題を解消するなど、連結納
税制度への移行を促す改正が行われます。

適用時期
平成22年10月1日から適用されます。(一部については平成22年4月1日以後開始事業年度から)
※適用にあたっては、選択制ではなく、100%支配関係のグループ法人に強制的に適用され
ることになります。

100%グループ内の法人の意義

グループ法人税制の対象となる“100%支配関係(完全支配関係)” とは?
1. 一の者(法人、個人)が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは
間接に保有する関係
または
2. 一の者との間に、当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係
をいいます。
※1 議決権割合ではなく、保有割合で判定します(自己株式を除きます)。
※2 「(民法上の組合形態である)従業員持株会」と「ストックオプションにより役員・
使用人が取得した株式」を合わせて5%未満の場合は、完全支配とされます。
※3 名義株式については、名義人ではなく、実際の権利者を株主として取扱います。


 





※1 この税制の適用対象となる取引は、内国法人間の取引に限定されています。
よって「個人-法人間」・「内国法人-外国法人間」での取引は対象になりません。
※2 親族→①6親等内血族・配偶者・3親等内姻族
②個人株主と内縁関係にある者
③個人株主の使用人等

グループ法人税制の特徴
グループ法人税制は、強制適用されます。
グループ法人税制においては、連帯納付義務を負うことはありません。
グループ法人税制においては、それぞれの法人の事業年度が異なっても影響は
生じません。
グループ法人税制においては、従前どおりの申告納付期限が適用されます。
グループ法人税制においては、保有する資産について時価評価することはあり
ません。
グループ法人税制においては、それぞれの法人の繰越欠損金の利用は制限され
ません。
グループ法人税制は、法人税(住民税・事業税・地方法人特別税)が対象となり、
消費税の処理には影響ありません。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページ上部へ戻る