当社は建設業を営む法人ですが、普段から取引している下請業者に、情報提供料の名目で謝礼200万円の支払いを行いました。そして、その金額を支払手数料で処理し、前期の税務申告に当たって損金処理をしましたが、何か問題はあるでしょうか?

Q.
 当社は建設業を営む法人ですが、普段から取引している下請業者に、情報提供料の名目で謝礼200万円の支払いを行いました。そして、その金額を支払手数料で処理し、前期の税務申告に当たって損金処理をしましたが、何か問題はあるでしょうか?

A.
 謝礼金200万円の妥当性について証明できる書類を整備しておく必要がありました。普段から取引している下請業者ということから、契約を結んだ上で、多額になりがちである謝礼金の損金性につき、慎重に検討しなければなりません。

 取引に関する情報の提供又は取引の媒介・代理・あっせん等の役務の提供(以下「情報提供等」と呼ぶ)をすることを業としていない者(その取引に係る相手方の従業員等を除く)に対して、法人が情報提供等の対価として金品の交付を行った場合でも、その金品の交付につき次に掲げる全ての条件に該当する等、その金品の交付が正当な対価の支払いであると認められるときには、その交付にかかった費用は交際費等に当たらない旨の規定が存在します。
1.その金品の交付が、事前に結ばれた契約に基づくものであること
2.提供を受ける役務の内容がその契約で具体的に明白となっており、かつ、それに基づき実際に役務の提供を受けていること
3.その交付した金品の価額が、その提供を受けた役務の内容に照らして相当と認められること

 ご質問のケースにおいては、単に謝礼として支払いが行われています。したがって、上記1については契約に基づくものでなく、上記2については支払内容が明らかではなく、実際に役務の提供を受けているとも考えにくい状況です。そして、上記3については、上記2の支払内容が明らかでありませんので、金銭が妥当なものであるとは判断できませんので、交際費として扱われることになると思われます。
 交際費による損金算入限度超過額の制限を受けず、支払手数料として処理を行うためには、下請業者と一定の契約に基づいて実際に顧客の紹介を受け(上記1・2)、紹介物件につき支給基準(請負金額の数%など)が明らかにされているといった対策を講じなければなりません。

 交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものを、交際費等と呼びます。ただし、値引き及び割戻し、寄附金、広告宣伝費、福利厚生費、給与等は、交際費に該当しません。現実として、顧客紹介によって情報提供料として一定額の支払いを行う建設業者は少なくないものと思われます。ただし、マージンの支給となって、支給基準も明確ではない場合が多く、多額となりますので、情報提供料としての条件を厳しく捉えています。
 ご質問のケースでは、この条件に沿って下請業者に対して情報提供料を支払わなければならないでしょう。以下は、下請業者に対して情報提供料の支払いを行う際に交わしておく業務委託契約書のひな型です。業務委託契約が発生したら、事前に契約書の作成を用意しておくといいと思われます。

                業務委託契約書
 委託者XX株式会社(以下「甲」という)は、受託者YY株式会社(以下「乙」という)に対し、次のとおり業務の委託をする。

(業務委託)
第1条 業務委託は、○○とし、次の事項を含む。
   一○○物件の塗装工事
   二○○建具の組立工事
   三請負工事の紹介

(委託期間)
第2条 委託期間は、平成28年4月1日より平成29年3月31日までとする。ただし、委託期間の満了前2カ月以内に甲乙のいずれからも異議がないときは、自動的に委託期間は2年間更新されるものとし、以降も同様とする。

(委託料の支払い)
第3条 委託料は、月額金○○万円とし、甲は、乙に対し、翌月10日までに当月の委託料を支払うものとする。なお、第1条第3号における委託業務について、甲は請負工事1件につき、金○○万円を乙に対して別途支払うものとする。

(秘密保持)
第4条 乙は本契約に関して知り得た情報を外部に一切漏えいしてはならない。

(報告義務)
第5条 乙は、甲の求めがあるときは、委託された業務に関する情報を速やかに報告しなければならない。

(契約解除) 
第6条 当事者の一方が本契約の条項に違反したときは、当事者は何らの催告も行わずに直ちに本契約を解除し、また被った損害の賠償を請求することができる。

(合意管轄)
第7条 甲及び乙は、本契約上の紛争については、乙の住所地を管轄する地方裁判所を第一審の管轄裁判所とすることに同意する。

(協議)
第8条 本契約に規定のない事項及び疑義が生じた事項については、甲乙誠実協議の上、決定するものとする。

以上、業務委託契約の成立を証するため本書2通を作成し、甲乙記名捺印の上、各1通を保有する。

平成28年3月1日

委託者(甲)

住所 愛知県○○名古屋市○○
氏名 XX株式会社 代表取締役 ○○ ○○          印

受託者(乙)

住所 愛知県○○名古屋市○○
氏名 YY株式会社 代表取締役 ○○ ○○          印

 普段から取引していることにより、下請業者との契約書の作成等については、軽視しがちですが、新しい契約を結んだら契約書の作成を行い、内容につき明らかにしておくことが重要です。

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