工事施工期間中に一時的に資金不足となってしまった

Q.
 当社はかつて1億円で購入した土地を有しているものの、遊休地となっていますので売却を検討しました。しかし、時価は1,000万円で、多額の売却損を計上すると当期純利益が減少してしまって経営事項審査で不利になると思い、処分しませんでした。また、投資目的で簿価1億円の投資有価証券を有しているものの、工事施工期間中に一時的に資金不足となってしまったことから売却を検討しました。しかし、時価は5,000万円で取得時より下がっており、これも経営事項審査で不利になるのを避けるために売却しませんでした。
 しかしながら、かえって経営事項審査の評点が下がってしまいました。評点を上げるためにはどうすればいいでしょうか?

A.
 ご質問のケースでは、遊休地や投資有価証券を売却すると当期純利益額が減ってしまうことから、経営事項審査(以下「経審」と呼ぶ)における自己資本額・平均利益額評点(X2)を上げるためにそれらの売却をしませんでした。しかし、実際には、それらを売却することで計上される売却損は特別損失に当たりますので、経審の評点にはあまり影響しません。また、遊休地の売却によって固定資産比率が下がりますので、自己資本対固定資産比率(Y5)が上がります。その結果、経審の評点のアップにつながりますが、そのことが念頭にありませんでした。
 X2=(自己資本額評点+平均利益額評点)/2
 平均利益額評点は、営業利益に減価償却実施額を加えたものの2期平均値です。
 Y5=自己資本/固定資産×100
 固定資産を減らせば、あるいは自己資本を増やせば、評点が上がります。

 X2に影響を及ぼすのは当期純利益ではなく営業利益ですので、遊休地売却により計上される売却損(特別損失)は評点に及ぼす影響は大きくありません。土地は簿価が高く、減価償却のできない固定資産ですので、固定資産比率を圧迫し、経営状況分析評点(Y)のY5を下げてしまいます。遊休地の売却によって固定資産が減り、Y5が上がります。

 経審における評点の算出方法を認識することが重要です。含み損を抱えている遊休地や投資有価証券を売却した場合にも経審の評点にあまり影響がなく、むしろ遊休地となっていて固定資産価額が高い土地を売却することで貸借対照表上の固定資産が減り、Y5を上げることが可能です。
 そして、資金不足となっているときには、経審の評点を下げてしまう借入金が増えるのを避けることができます。
 Y2=(流動負債+固定負債)/売上高/12
 Y2は負債総額が売上高の何カ月分に相当するかが分かる指標で、低いほど評点が高くなります。

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