経営事項審査における経営状況分析評点が下がってしまいました

Q.
 当社は建設請負業を営んでいます。工事請負契約において、受注価格の一部を前受金として受領しており、残額は工事完成引渡後に請求を行っています。
 工事施工期間中に一時的に資金不足となる場合があるのが建設請負業の特徴で、金融機関の対応が遅れましたので社長個人より借り入れましたが、まだ返済をしていません。経営事項審査における経営状況分析評点が下がってしまいましたが、借入金残高を減らすためにはどうすればいいでしょうか?

A.
 工期の長さや請負金額の大きさにもよるものの、工期の短い物件については前受金は2割~3割程度で、残額は工事完成引渡後となる場合が多いと思われます。
 また、工事原価は、工事の進捗に応じて各下請け業者に支払わなければならないことから、工事出来高3割を超えると工事完成引渡後代金回収までの間、現金の入金と出金が時間的にずれてしまいます。したがって、運転資金を借り入れる必要が生じます。
 社長から借り入れると、金融機関から借り入れた場合と違い、定期的な返済をしないことが多いために、借入金残高が長期間残ってしまうということになります。
 決算時における借入金残高が多額である場合には、経営状況分析評点(Y)の負債回転期間評点(Y2)が下がり、支払利息の増加により純支払利息比率評点(Y1)も下がります。
 Y2=(流動負債+固定負債)/売上高/12
 Y1=(支払利息-受取利息配当金)/売上高×100
 Y2は負債総額が売上高の何カ月分に相当するかが分かる指標で、Y1は売上高に対する純粋な支払利息の割合が分かる指標であり、どちらも低いほど評点が高くなります。

 第一に必要運転資金を確保すべく資金回収を見直すことが、借入金残高を減らすためには重要です。手形期日を短縮したり、請負代金のうち前払金割合を増やしたり、あるいは、躯体完成時や上棟時等における中間金の請求等によって工事代金の支払回数を増やしたりすることで、資金回収の見直しを行います。ただし、経営事項審査の基準とされる決算期末までに工事が完了しなければ、負債の部に「未成工事受入金」が残り、YのうちでY2の評価が下がってしまうことから、工事進行基準の採用といった経営判断としての留意が欠かせません。
 個人から借り入れる場合にも、返済できる財務状況であるなら、返済を行うことで、借入金残高を減らすことができます。一方、返済できない財務状況であるなら、借入金の資本組入れ(DES)を行うことで、借入金残高を減らすという選択肢もあります。DESによって負債は減り、純資産が増加しますので、自己資本比率(Y6)が上がります。
 Y6=自己資本/総資本×100
また、借り入れを現状より低利率のものに借り換えれば、支払利息を減らすことが可能です。

 借入金残高を減らすためには、第一に営業部や工事部と密に連絡を取り、資金回収を見直して精度の高い資金繰り表を作成することにより運転資金の誤差を最小限にとどめ、借り入れを必要最低限にして余計な支払利息をなくす必要があります。
 精度の高い資金繰り表を作成することで、常に残る借入金の把握をし、増資等によって新たな資金を導入することなどを検討して、自社の財務体質の改善に努めることが重要です。
 また、身内債務を整理するだけでなく、金融機関からの借入金の条件を見直して、返済期間や金利に関する交渉を行うとともに、工事代金の回収口座や、協力業者に対する支払い・従業員の給与振込口座の統一などによって、より深い信頼関係を築きます。そして、現状より有利な条件変更あるいは借り換えを検討した上で実践すれば、Yを上げることができます。

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