適正に経営事項審査の評点を算出するという観点から

Q.
 当社は建設業者ですが、工事受注のためにかかった経費を仮払金で計上し、受注後も未成工事支出金に振り替えることなく、仮払金として残ってしまっています。また、未収入金勘定の中に売掛債権である完成工事未収入金とその他の未収入金が計上されており、経営事項審査でも未収入金勘定の金額により審査がなされ、評点が下がってしまいました。
 期中で資金繰りの悪化により銀行から1億円を借り入れたものの、期末に1億2,000万円の立替金が残っており、その大半が社長の過去の持出分であることから当期末にも整理せずに残ってしまっています。適正に経営事項審査の評点を算出するという観点から、以上のような処理に問題があったでしょうか?

A.
 工事受注前にかかった仮払金を受注後に未成工事支出金に振り替えなかったために、本来なら計上されるべき金額より未成工事支出金が減少し、適正な営業キャッシュフロー評点(Y7)が算出されず、したがって経営状況分析評点(Y)も正しく算出されませんでした。
 また、未収入金勘定の中に売掛債権である完成工事未収入金とその他の未収入金が計上されているために、適正なY7の算出がなされず、Yも正しく算出されませんでした。
 営業キャッシュフロー(2期平均値)=経営利益+減価償却実施額-法人税住民税及び事業税+貸倒引当金(長期含む、正の数値で計算)増減額-売掛債権(受取手形+完成工事未収入金)増減額+仕入債務(支払手形+工事未払金)増減額-棚卸資産(未成工事支出金+材料貯蔵品)増減額+未成工事受入金増減額
 完成工事未収入金が減少すればY7が上がり、未成工事支出金が増加すればY7が下がります。
 社長に対する多額の立替金が残っており、立替金を整理すれば運転資金の確保ができたにもかかわらず銀行から借り入れたために、経営事項審査(以下「経審」と呼ぶ)の負債回転期間評点(Y2)が下がり、また、借り入れに伴う利息の支払いによって純支払利息比率評点(Y1)も下がることから、経審の評点も下がるという結果になってしまいました。
 Y2=(流動負債+固定負債)/売上高/12
 Y1=(支払利息-受取利息配当金)/売上高×100
 Y2は負債総額が売上高の何カ月分に相当するかが分かる指標で、Y1は売上高に対する純粋な支払利息の割合が分かる指標であり、どちらも低いほど評点が高くなります。

 工事受注前にかかった経費のうち仮払金として計上した金額で受注後の未完成物件に係る金額は、未成工事支出金に振り替えることが重要です。未成工事支出金が増加するとY7が下がってしまうものの、経審の評点を適正に算出するためには未成工事支出金に振り替える必要があります。
 また、売掛債権である完成工事未収入金とその他の未収入金を分け、Y内のY7に影響を及ぼす完成工事未収入金だけを把握すれば、売掛債権である完成工事未収入金が減って経審の評点が上がります。
 借入金の増加や利息の支払いは経審の評点を下げてしまうことから、銀行等より借り入れる前に立替金を整理して、無駄な借り入れや利息の支払いを少なくすることが、経審の評点を上げるために重要です。

 工事受注前にかかった仮払金は、工事受注契約が結ばれたら、その受注契約を結んだ未成工事支出金に振り替える会計処理をします。そうすることで、工事完成後に仮払金として残ってしまうこともありません。また、現在の未収入金勘定を完成工事未収入金とその他の未収入金に分けて計上すれば、経審の評点を適正に算出することが可能です。
 社長に対する立替金は身内債権に当たりますので、回収が行われず立替金として残ってしまいがちですが、資金繰りが悪化して銀行から借り入れる前に立替金を整理することで、借り入れなくても済んだり、借入金額を減らしたりすることができる場合があります。

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