下請け分の工事費用については直接費だけを未成工事支出金として処理して決算を終了させましたが、問題はありませんか?

Q.
 当社は中小企業で、建設業を営んでいます。このたび、発注者側の都合で、地元の建設業者2社がJV(建設共同企業体)を組み、大型工事を受注して工事をしています。当社はJVに構成員としての出資金を払い、また、JVからの下請けとして工事の一部を行っています。
 当社決算の12月までに工事が完成しませんので、JV出資金については出資金として流動資産に計上し、下請け分の工事費用については直接費だけを未成工事支出金として処理して決算を終了させましたが、問題はありませんか?

A.
 直接費だけを未成工事支出金として処理したことが問題です。
 JV工事であったり、JVからの下請け工事であったりする場合にも、工事に係る間接費が存在すると思われます。直接費だけの計上ではなく、間接費の配賦も必要でした。

 複数の工事に共通して発生する費用を間接費と呼び、具体的には各現場で共通して用いている倉庫の維持経費や現場を監督する技術者の人件費といったものが挙げられます。
 建設業経理では、完成工事及び未成工事に係る間接費を決算時に合理的に按分して配賦する必要があります。間接費を各月の工事ごとの実績に応じて(現場の人件費の比率等により按分するなどして)配賦します。
 工事が完成するまでは、各現場において直接かかった材料費、人件費、外注費及びその他の経費が存在し、付加するものとして間接費の配賦額が存在することとなります。決算時に、完成工事に係る間接費は完成工事原価に振り替えられ、工事の損益を把握できるようになります。しかし、決算時に未完成である工事に係る間接費は完成工事原価として計上されません。

 ちなみに、毎月の間接費の配賦に代えて、決算時に未完成である工事につき、直接かかった材料費、人件費、外注費、その他の経費と、間接費の未成工事への合理的な按分を行ったものを、決算処理以前に原価等の経費処理したものの戻入額(戻し額)として経理処理するという会社も存在します。
 例えば、毎月複数の現場の工事の監督をして給与等の支給を受けている現場監督の人件費について、労務費等の経理処理をしていた場合、決算時に未成工事に係る現場監督の人件費相当分を、労務費の戻入とします。
 未完成の工事に係る間接費については、月ごとに処理するにせよ、決算時に処理するにせよ、合理的に見積もり計上し、未成工事支出金を算出することが重要です。
 建設業の業務調査において、完成工事の計上時期による正しい課税所得の把握と、未成工事に係る間接費の未計上又は過少計上額の問題が多く指摘されていますので、留意する必要があります。

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