左官工事事業者で従業員を3名雇っており、売上高は毎年4,000万円前後です

Q.
 当社は左官工事事業者で従業員を3名雇っており、売上高は毎年4,000万円前後です。請け負った工事には従業員のみで対応できますので、外注費は多額になっておらず、特に設備投資等の計画もないことから、消費税の申告方法はかねてより簡易課税制度を採用しています。
 平成27年の決算に当たって売上高の確認を行ったところ、その課税期間における課税売上高が3,000万円であり、前年より大幅に減少しました。その原因は建設業特有の夏枯れで、6月から10月までの請負工事がありませんでしたので、その間は同業者に依頼して3名の従業員をいわゆる常用人工として従事させました。課税売上高の内訳は、請負工事高が1,800万円、常用人工売上高が1,200万円でした。当社の営む建設業は第三種事業に当たることから、70%のみなし仕入率を適用して控除対象仕入税額を算出しましたが、問題はないでしょうか?

A.
 ご質問のケースでは、控除対象仕入税額及び納付税額を次のとおり算出しています。
 課税売上高に係る消費税額=30,000,000円(課税標準額)×8%=2,400,000円
 控除対象仕入税額=2,400,000円×70%=1,680,000円
 納付税額=2,400,000円-1,680,000円=720,000円
  ※便宜上、消費税と地方消費税を一緒に計算しています。

 しかし、業種区分は事業全体で判定するのではなく、1取引ごとに判定しなければなりません。建設業は第三種事業に当たりますが、常用人工売上高については、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業として第四種事業に当てはまることとされていることから、60%のみなし仕入率を適用して控除対象仕入税額を算出する必要があります。
 したがって、控除対象仕入税額及び納付税額を次のとおり算出することとなります。
 課税売上高に係る消費税額=30,000,000円(課税標準額)×8%=2,400,000円
 そのうち第三種事業に係る消費税額=18,000,000円×8%=1,440,000円
 そのうち第四種事業に係る消費税額=12,000,000円×8%=960,000円
 みなし仕入率=(1,440,000円×70%+960,000円×60%)÷2,400,000円=0.66
 控除対象仕入税額=2,400,000円×0.66=1,584,000円
 納付税額=2,400,000円-1,584,000円=816,000円
  ※便宜上、消費税と地方消費税を一緒に計算しています。

 簡易課税制度は中小事業者の消費税事務負担を軽減するための特例制度であるものの、事業区分の判定は容易ではありません。ご質問のケースにおいては、事業区分がなされていますが、区分されていない場合はその区分できない事業のうち最低のみなし仕入率(ご質問のケースでは60%)を適用することになっています。
 建設業については、材料の無償支給による工事、ご質問のケースのような加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業は第四種事業に当てはまることから、材料の調達方法や請負契約書を毎回確認することが重要です。

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