全工事を当社で実施し、工事終了後にB社に対してJV構成比(A社70%、B社30%)に応じて利益の分配をしましたが、何か問題はありますか?

Q.
 当社(A社)は中小業者で、建設業を営んでいます。このたび、B社とJV(建設共同企業体)を組み、大型工事を受注しました。具体的には学校の大規模耐震工事であり、当社がかつて施工をしたもので当社単独での受注予定であったものの、発注者の入札条件によりJVでの受注となりました。
 契約はJVで行ったものの、全工事を当社で実施し、工事終了後にB社に対してJV構成比(A社70%、B社30%)に応じて利益の分配をしましたが、何か問題はありますか?

A.
 JV会計については、A社が入金や支払いの全てを扱い、工事終了後に構成比に応じた分配を行うことはできます。ご質問のケースではA社は70%の売り上げ及び売上原価が計上され、B社は同じく30%が計上された帳簿となります。
 しかし、形式上はJV工事であっても、現場監督も派遣せず、実際の工事にB社の関与が全くありませんでしたので、「ペーパーJV」と判定され、工事の談合金と同じくB社に払った分配金が税務調査において「交際費」の扱いとなる恐れがあります。B社と入念な打ち合わせを行い、工事実態等を検討しなければなりませんでした。

 分配金が交際費として扱われても、本来の工事利益になっても、B社にとっては法人税法上の「収益」であることは確かですので、大きな影響はないでしょうが、A社にとっては交際費とされるか正常な取引とされるかで、同法上の課税所得に及ぼす影響は大きいものとなります。
 JVについては、共同して事業を行い、共同して責任を負い、構成比に応じて共同して工事からの利益を享受します。ご質問のケースでは、その実態がペーパーJVと判断されるものですが、B社は工事途中で発生した事故の賠償責任など工事完了までの全責任を有することから、何らかの利益(分配金)があるのは当然であるという考え方も存在します。しかしながら、工事等で事故が発生することもなく、結果的にB社が契約を除いて全く業務を行っていない場合においては、課税当局から交際費であると指摘される恐れがあります。
 実務上は、通常、ペーパーJVとして交際非課税を受けるリスクや、発注者側からJVの実態が存在しないと指摘されるリスク等を回避するため、工事事務所の賃貸借、現場監督の派遣、小工事の一部等を行います。

 JV工事は、大型の工事で長期間にわたる工期となるのが一般的です。構成員についても、2社ではなく3社となる場合も少なくありません。したがって、幹事社(メイン社)が他の構成員(サブ社)の協力を得つつ主導して、人員構成などを適切なものとし、税務上の誤解を招くことのないように留意する必要があります。消費税の扱いについては、特段の注意をして処理することが重要です。

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