当社は建設業を営む法人ですが、入札の際に便宜を図ってもらうため、普段から取引している下請業者に、支払手数料として200万円を支払い、その支払額で処理していました。そして、同じく工事を行うに際して車両通行の阻害や騒音の発生などにつき地元住民への対策費用を1,000万円支払い、これについてもその支払額を支払手数料で処理していました。いずれの支払手数料についても、前期の税務申告に当たって損金処理をしましたが、何か問題はあるでしょうか?

Q.
 当社は建設業を営む法人ですが、入札の際に便宜を図ってもらうため、普段から取引している下請業者に、支払手数料として200万円を支払い、その支払額で処理していました。そして、同じく工事を行うに際して車両通行の阻害や騒音の発生などにつき地元住民への対策費用を1,000万円支払い、これについてもその支払額を支払手数料で処理していました。いずれの支払手数料についても、前期の税務申告に当たって損金処理をしましたが、何か問題はあるでしょうか?

A.
 法人税法上、経費の損金性を慎重に確認しなければなりません。納税者側が必要経費である旨を端的に主張したとしても、第三者側に必要経費であると認められるよう書類を万全にする必要があります。ご質問のケースにおいては、会社が交際費として認識していなかったことに問題があり、多額の支出がある場合には、あらかじめ税理士等に相談することが重要です。

 談合金や地元住民への対策費用に関しては、租税特別措置法関係通達第61条の4(1)-15(交際費等に含まれる費用の例示)により、次のような費用は原則として交際費として処理する旨が定められています。
(7)建設業者等が高層ビル、マンション等の建設に当たり、周辺の住民の同意を得るために、当該住民又はその関係者を旅行、観劇等に招待し、又はこれらの者に酒食を提供した場合におけるこれらの行為のために要した費用
 (注)周辺の住民が受ける日照妨害、風害、電波障害等による損害を補償するために当該住民に交付する金品は、交際費等に該当しない。
(10)建設業者等が工事の入札等に際して支出するいわゆる談合金その他これに類する費用
 したがって、ご質問のケースにおける費用の支払額は、交通費に当たりますので、損金算入限度超過額は損金不算入として課税対象に含む税務申告を行うべきでした。

 交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものを、交際費等と呼びます。ただし、値引き及び割戻し、寄附金、広告宣伝費、福利厚生費、給与等は、交際費に該当しません。通達で、談合費や総会対策等のために支出する費用は交際費に該当するとされています。この点、談合費が入札等に当たって支払う交際費に該当するか否かは地元住民への対策費用の支払いが損害を補償する性格に合致するか否かが焦点になるでしょう。すなわち、帰責原因の存在、損害の発生、帰責原因と損害の間に相当因果関係があり、損害補償としての性質が存在する場合には、交際費に当たらないと思われますが、単に工事の引き延ばしを避けるために「供応」を図る目的で行われるのであれば、交際費として扱われます。

 必要経費であるという認識であっても、書類の不備等が原因で損金性が認められないこともあります。普段から慎重に書類を記載し、内容を明白にしておくといいでしょう。

 なお、交際費に該当しないものとして、次のようなものが挙げられます。
飲食費等:飲食その他これに類する行為のためにかかる費用で、参加者1人当たり5,000円以下の費用
会議費:会議に関連して、弁当、茶菓、その他これらに類する飲食物を供与するために通常かかる費用
福利厚生費:専ら従業員の慰安の目的で行われる旅行・演芸会・運動会などのために通常かかる費用
少額広告宣伝費:手帳、カレンダー、手ぬぐいなどを贈与するために通常かかる費用や、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用

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