当社は建設業を営む法人ですが、前期に建設機械の定期メンテナンスをし、主な機械につき全部オーバーホールをしました。業者から800万円を請求されましたので、支払いをし、修理の一環という考えから、全額を修繕費として、税務上損金経理しました。このように800万円全額を修繕費としたことに問題はないでしょうか?

Q.
 当社は建設業を営む法人ですが、前期に建設機械の定期メンテナンスをし、主な機械につき全部オーバーホールをしました。業者から800万円を請求されましたので、支払いをし、修理の一環という考えから、全額を修繕費として、税務上損金経理しました。このように800万円全額を修繕費としたことに問題はないでしょうか?

A.
 企業が有する固定資産につき通常の使用を可能とするために行われる支出額を、修繕費と呼びます。税務においては、固定資産の修理や改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の通常の維持管理や原状回復のためにかかったと認められる部分の金額のことです。
 固定資産の価値を増加させる効果が認められる支出であるかということと、固定資産を使える期間を延長させるための支出であるかということが重要です。なぜなら、その修理や改良等が、固定資産の価値を増加させるものであるか、固定資産を使える期間を延長させるものであるならば、その増加又は延長させる部分に対応する金額は、資本的支出とされて資産計上をしなければならず、修繕費とは認められないからです。
 固定資産の購入時と比較して、資産価値が時間的・物的に高くなっている部分に関しては、新しく資産を取得したと判断されますので、区別して考えることが重要です。

 ご質問のケースでは、定期メンテナンス費用のうち、部品交換による通常の維持管理に該当する部分については修繕費として損金処理をすることに問題はありませんが、機能を向上させる部品やより長期間使用可能な部品への交換についての支出額は資本的支出として資産計上を行う必要があります。

 修繕費とすることができるか否かは、その実質により判定する必要があり、修繕費や改良費といった名目で判断するのではありません。資本的支出と修繕費を区別するのは容易ではないとされているものの、一定の基準で区別することができます。
 第一に、おおよそ3年以内の期間を周期としてなされる修理や改良等であるか、一つの修理や改良等の金額が20万円未満であるならば、その支出した金額を修繕費とすることが可能です。第二に、一つの修理や改良等の金額のうちに、資本的支出か修繕費かが不明確な金額が存在するならば、次の基準で区別することが可能です。
○その支出した金額がその固定資産の前事業年度終了時における取得価額のおおよそ1割相当額以下であるか、その支出した金額が60万円未満であるならば、修繕費とすることが可能です。
○法人が継続的にその固定資産の前事業年度終了時における取得価額の1割相当額かその支出した金額の3割相当額のどちらか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出としているならば、その処理が認められます。
 そして、固定資産の修理や改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の通常の維持管理や原状回復のためにかかったと認められる部分の金額については、修繕費として支出時に損金算入が可能です。
 次のような支出は、資本的支出と判定され、修繕費とはならないのが原則です。
○機械の部品を特に性能や品質の高いものに交換した場合において、その交換の金額のうち通常の交換の金額を超過する部分の金額
○建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
○用途変更のための模様替えなど、改装や改造に直接かかった金額

 定期的なメンテナンス費用でも、内容によっては資産計上すべき支出もありますので、経費の計上に関しては慎重に判断しなければなりません。多額の支出である場合には、特に留意する必要があります。

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