私は、建設業を営む法人の社長です。上半期の業績が予想を上回って好調でしたので、下期からの従業員給与のベースアップを決めました。その際、社長の私の給与についても月額を増やして下期は増額後の額を毎月支給しましたが、増額分についても経費とすることが認められるでしょうか?

Q.
 私は、建設業を営む法人の社長です。上半期の業績が予想を上回って好調でしたので、下期からの従業員給与のベースアップを決めました。その際、社長の私の給与についても月額を増やして下期は増額後の額を毎月支給しましたが、増額分についても経費とすることが認められるでしょうか?

A.
 法人がその役員に支給する給与のうちで、法人税の所得計算において損金の額に算入されるものの範囲は、法人税法により限られています。
 ご質問のケースでは、利益が発生したことで、その利益を調整するために、毎期の所定の時期ではない時期に役員報酬の額を変更していますが、このような場合には法人税法に定める給与以外の給与とされることから、その増額分については損金算入が認められないといえます。

 ご質問のケースにおいて、法人が支給する役員報酬については、定期同額給与の条件に該当しなければなりません。
毎月同額を支給している場合等、原則として各支給時期の支給額が同額であるものを定期同額給与と呼びます。定期同額給与の額を変更するに当たり、変更の理由・時期に一定の制限が設けられています。
 具体的には、期首より3カ月以内に行われる通常の改定時の改定であるか、その他の改定については法人税法等に規定される一定の事由(役員の地位の変更や、職務内容の重大な変更があった場合等)に当たることが必要です。
 ご質問のケースでは、改定理由が一定の事由に当たりませんので、期首より3カ月以内の一定の時期における改定でないならば、その一部につき損金算入が認められません。
 したがって、毎期の定時株主総会で、役員報酬の額を決めるに当たっては、後に変更するのが容易ではないことを考慮の上、十分に検討することが重要です。

 平成19年4月1日以降に開始となる事業年度で、法人が役員に支給する給与について、損金の額に算入するためには、次のどれかに当たる必要があります。
○定期同額給与
○利益連動給与
○事前確定届出給与
 ご質問のケースの法人と同様、定期同額給与で役員報酬の支払いを行っている企業が多いと思われますので、定期同額給与に関して詳細を述べます。
 「毎月同じ金額を支払う」ことが、定期同額給与の基本といえます。法人税法においては、「その支払時期が1カ月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」も、定期同額給与に該当します。
 また、「やむを得ない事情があった場合、金額が年度途中で変更されても定期同額給与とみなしても構わない」という定めも存在します。やむを得ない事情については、次の三つのうちのどれかに該当する必要があり、該当する場合には金額が変更されても定期同額給与とみなされます。
○期首より3カ月以内における改定
○役職や職務内容の変更による改定
○経営状況の著しい悪化による減額改定(この場合は減額のみ認められる)

 役員給与については、全国の会社のうち99%を占めるとされている中小企業の大部分が、定期同額給与であることが求められています。例外的に、やむを得ない事情による役員給与の増減額は認められるものの、議事録に改定事由及びその期間を記載することで、文書として残す必要があります。議事録をその都度作成しておけば、税務調査の直前になって困惑することもないでしょう。

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