当社は、建設業を営む3月決算の法人です。今期(X1 年3月期)の業績が良かったので、2月末頃に法人税の試算を行ったら納税額が多額となることが判明しました。したがって、X1年3月に工事損害保険料及び資材置き場の地代を年払い(X1年4月~X2年3月分)し、費用として計上しましたが、問題はありませんか?

Q.
 当社は、建設業を営む3月決算の法人です。今期(X1 年3月期)の業績が良かったので、2月末頃に法人税の試算を行ったら納税額が多額となることが判明しました。したがって、X1年3月に工事損害保険料及び資材置き場の地代を年払い(X1年4月~X2年3月分)し、費用として計上しましたが、問題はありませんか?

A.
 前払費用につき損金算入が可能となるには、次の条件に該当しなければなりません。
○支払いをした時点以降1年以内に役務の提供を受けていること
○一定の契約を基に継続的に役務の提供を受けるために支出した費用であること
 ご質問のケースでは、この二つに該当しますので支払った金額を今期に損金算入することが認められます。しかし、その費用が工事原価に含まれるのであれば未成工事部分を棚卸資産として計上する必要があり、このケースにおける費用は間接原価(共通費)に当たりますので、未成工事支出金に配賦する部分は今期の損金とならないといえます。
 ご質問のケースについては、短期前払費用の損金算入の要件に該当するものの、その費用が工事原価に当たることから、完成工事原価と未成工事原価に分けなければなりません。未成工事部分を含めた全額の損金算入には問題があります。

 ご質問のケースにおいて、年払いした工事損害保険料及び地代(どちらも共通原価)につき、一定の配賦基準に沿って完成工事原価と未成工事原価に配賦しなければなりません。

 1年以内の短期前払費用につき、収益との厳格な期間対応による繰延経理に代えて、その支払時点において損益算入が認められており、企業会計における重要性の原則による経理処理を税務上も認めるものといえます。
 ただし、「支払いから1年以内に提供を受ける役務に係るもの」である必要がありますので、支払時の損金として認められない場合もあることに留意しましょう。
 また、継続適用が条件とされていることから、利益が発生したときだけ年払いを行うと課税上の弊害が出る恐れがありますので、慎重にこの通達の適用を決めることが重要です。
 特に建設業については、短期前払費用の適用を受けて費用処理したものが工事原価に該当する場合、未成工事支出金に当たるものの有無を確認しなければなりません。

 なお、法人税法基本通達2-2-14には次のように規定されています。
 「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る