建設業の法人を自ら立ち上げました。

zeimuchosa01

Q.
 私はバブル経済の時期に勤務していた建設会社を退職し、建設業の法人を自ら立ち上げました。以後のバブル崩壊などの苦境も乗り越えて地元では広く知られる企業にまで成長し、今期もアベノミクスなどの影響で現在のところ好調です。
 先日、かつての勤務先である建設会社の元同僚のご子息が突然来社され、「父が数カ月前に他界したのですが、父の遺品の中に御社の株が少しありましたので、適正な価額で買い取って頂きたいと考えて訪問致しました」とのことでした。
 法人立ち上げ時に元同僚に株主として名義を借りましたが、資本金を実際に払い込んだのは私のみで、元同僚からの資金提供は一切ありませんでした。ご子息などのご遺族は元同僚から設立当時の経緯を聞いておらず、当社の株主であることも知らなかったとのことです。今になって当時の経緯をお伝えしても事態が悪化しそうであり、また、当時は助けてもらったということもありますので、顧問税理士と相談の上、元同僚の株を買い取ることを決めました。しかし、予想外の出費のため、新規の設備投資を延期することになってしまいました。名義株を放置すべきではなかったのでしょうか?

A.
 平成2年以前に設立した法人は、設立時に7人(会社を円滑に設立するには8人)以上の株主を要しました。しかしながら、小規模な会社では、全ての株主にお金を出してもらうというわけではなく、ご質問のケースのようにオーナーのみがお金を出し、他の株主からは名義のみを借りるということ(名義株)がよく見受けられました。
 このような名義株は、可能な限り早期に本来の株主の名義に戻しておく必要があります。ご質問のケースにおいても、実態とかけ離れた名義株は速やかに整理するべきでした。株主名簿を確認し、名義株が見つかれば、速やかに手続きをすることが重要です。株主は法人税申告書の別表二にも記されています。

 名義株を用いて設立した法人については、名義を借りた人から「私は名義を貸しただけであって真の株主ではない。名義を戻せと言われたら、いつでもこれに応じる」といった念書を取っていれば、少しは安心できますが、ご質問のケースのように現在まで放置している場合も多いと思われます。名義を貸した人が先に他界してしまったら、特にトラブルが起きやすいので留意が必要です。
 設立当時の名義を貸すケースは多く見受けられましたので、軽い気持ちで名義を貸したまま、報告や相談を家族にしないことも少なくありません。そして、名義を貸しただけだと深刻に考えず、本人が株主であること自体を失念している場合もあります。しかし、ご遺族にとっては、上場していない会社の株式が相続財産として出てきたが、株主となった経緯も知らされていないということになりますので、買い取ってほしい旨を伝えようと来社されるのは当然の権利といえます。
 したがって、名義を貸した人が事情を覚えている間に、本来の名義、すなわち実際にお金を払い込んだ人に戻すように手続きをするべきです。実際にお金を払い込んだ人は、多くの場合に創業オーナーですので、創業オーナーの相続財産は増えます。しかし、それを防ぐために創業オーナーの子供などの名義にすれば、贈与の問題が生じます。創業オーナーではない名義にするのであれば、しっかりした証拠がない場合には贈与ではないかと疑われる恐れが十分にあることから、留意が必要です。
 会社を設立してから20年以上経っているならば、人間関係が不仲になっていたり、疎遠になっていたりする場合も珍しくありません。したがって、名義株に該当するか否かについて争われるケースも存在し、一代目の問題が判明して二代目になっても係争中であるということもあります。
 名義株の整理に当たっては、細心の注意を払うべきだといえるでしょう。

 ちなみに、平成3年以後に設立された法人にも関係のある話として、安易な株式分散も危険であるといえます。
 仕入先に株式を持たせているという会社がしばしば見受けられます。仕入先であれば商売においてはこちらが優位な立場にあり、又は安定株主として持たせている可能性もあります。このように仕入先に持たせている株式については、万一その仕入先が倒産した場合等に問題が生じますので、速やかに整理をするなど他の対処法を検討する方がいいでしょう。
 ある会社の株主を仕入先が持っており、その仕入先が倒産した際、実際にこのようなことがありました。株式を買い取ってほしいという話が、仕入先の破産管財人である弁護士からその会社に対してあり、その会社は相続評価額で買い取ると伝えました。しかし、その弁護士から強く叱られ、時価の半額という相続税評価額と比べてかなり高い価額で買い取る結果となってしまいました。
 安易な株式分散はこのように予想外の結果となってしまう場合があることから、誰を株主にするのかについては慎重に検討することが重要です。

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